研究活動

理論物質設計

第一原理計算によるトポロジカル物質の探索

波動関数の幾何学的な性質は、結晶や電子状態の対称性と密接な関係があります。群論に基づく数理物理と高精度な第一原理計算を組み合わせることで、理論的にトポロジカルな物質を設計することが可能となります。

我々は、トポロジカル電子化物という物理・化学に跨る新たな材料提案を行いました。電子化物とは、結晶中の空隙に電子e-が入り込み、アニオンとして構造の安定化を担っている物質群で、小さな仕事関数を持つことから、触媒等の分野で研究が進んでいます。例えば、層状の絶縁体(Sc2C)2+2e-ではアニオン電子2e-が層間の位置に広がっているため、アニオン電子よる巨大なトポロジカル分極を有する特異な系となっています。このバルクのトポロジカルな分極を反映し、Sc2C表面では幾何学的に保護された金属状態が出現します。この表面状態はアニオン電子起源のため、電子雲は表面に浮かんで出現します。このようなトポロジカルな電子相は電子化物で数多く見出され、我々はありふれた鉱物のアパタイトの電子化物が高次トポロジカル相に相当することも発見しました。

[Phys. Rev. X 8, 031067 (2018). Phys. Rev. Research 2, 043131 (2020).]