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物質中の電子は、電荷やスピン、軌道、スピン状態、電気双極子など様々な自由度を持っています。これらの自由度が結晶中でどのような秩序構造を形成し、どのような励起状態を持っているかを調べることで、物質が示す性質の起源を解明しています。磁化や強誘電性分極などの基礎物性測定や、放射光X線散乱(共鳴X線散乱、共鳴軟X線散乱)や中性子散乱といった量子ビームを用いた構造物性測定を行っています。

高エネルギー加速器研究機構のフォトンファクトリーでは重点課題であるS2型課題2015S2-007:”共鳴X線散乱による磁気テクスチャとそのダイナミクスの観測”を推進しています。

コヒーレント軟X線散乱によるスキルミオン格子のイメージングと高速ダイナミクスの解明

スキルミオンは、半世紀前に素粒子物理学において、理論的に導入された仮想粒子ですが、空間反転対称性の破れたカイラル磁性体において、それと似た性質をもつ準粒子が生成されることが近年発見されました。このスキルミオンが三角格子状に整列したものがスキルミオン格子と呼ばれています(右図)。ひとつのスキルミオンの中には電子スピンが渦巻き構造を作っており、そのスピンベクトルの始点を集めるとベクトルの終点が球の全方位を覆うようにあらゆる方向を向いています。このスキルミオン格子は中性子小角散乱やローレンツ電子顕微鏡によって実際に観測されてきましたが、我々は新たな観測手法としてコヒーレント軟X線小角散乱に着目し、その観測手法の開発を行ってきました。コヒーレント軟X線散乱によるホログラフィ測定や、位相回復アルゴリズムなどにより、スキルミオン格子の実空間イメージングを行っています。さらに、電場や電流、光照射などの外場に対するスキルミオン格子の応答も調べています。

[関連論文]
Dynamical Process of Skyrmion-Helical Magnetic Transformation in Chiral-Lattice Magnet FeGe as Probed by Small-Angle Resonant Soft X-ray Scattering
Y. Yamasaki, D. Morikawa, T. Honda, H. Nakao, Y. Murakami, N. Kanazawa, M. Kawasaki, T. Arima, and Y. Tokura
Phys. Rev. B 92, 220421(R) (2015) 10.1103/PhysRevB.92.220421


グレージング・インシデンス軟X線散乱による薄膜の界面や表面に現れる特異な電子状態秩序の観測

固体表面や薄膜試料の界面には、特異な電子状態が発現することがしばしば起こります。我々は、LaCoO3薄膜においてスピン状態と電子軌道が長周期の変調構造を形成することを発見し、それによりスピンも変調構造を創り自発磁化をもつフェリ磁性体となることを解明しました。さらに、このスピン状態と軌道秩序は、薄膜の表面では内側よりも高い温度から生じていることをグレージング・インシデンス(GI)軟X線散乱という新しい実験手法によって発見しました(右図)。電子軌道の秩序状態を水の固体状態、無秩序状態を水の液体状態と捉えると、氷を暖めていったときに、氷の内側は解けているのに、氷の表面はまだ凍ったままというとても奇妙な状態が実現していることに対応しています。これは、固体の表面効果によって軌道秩序が内側よりも安定化したために起きた現象と考えられます。今後は、GI軟X線散乱によって表面や界面に現れるスキルミオン磁気構造などの特異な電子状態秩序の探索・解明を目指します。

[関連論文]
・Surface Ordering of Orbitals at a Higher Temperature in LaCoO3 Thin Film
Y. Yamasaki, J. Fujioka, H. Nakao, J. Okamoto, T. Sudayama, Y. Murakami, M. Nakamura, M. Kawasaki, T. Arima, and Y. Tokura, J. Phys. Soc. Jpn. 85, 023704 (2016), 10.7566/JPSJ.85.023704
・Spin-orbital superstructure in strained ferrimagnetic per ovskite cobalt oxide
J. Fujioka, Y. Yamasaki, H. Nakao, R. Kumai, Y. Murakami, M. Nakamura, M. Kawasaki, and Y. Tokura,
Phys. Rev. Lett. 111, 027206 (2013)

過去の研究トピック