研究活動

先端物質創成 | 量子ビーム分光 | 量子相制御 | 理論物質設計

量子相制御

バレートロニクス

現代社会を支えるエレクトロニクスは、電荷の有無をスイッチのON/OFFに見立てて様々なものを制御している。そこに更に量子力学的自由度である”バレー”を付け加える試みとして、”バレートロニクス”が提唱されている。等価な複数の伝導帯の底(バレー)が幾何学的に区別可能である時発現するバレー自由度は、スピン軌道相互作用を介してスピン自由度と結合するために、これまでにない新奇な現象やデバイスの実現が期待されている。

電界効果による電子相制御

電子相関が強い強相関物質は、金属状態から超伝導状態になって電気抵抗が消失したり、あるいは突然磁性が発現したりと、劇的な物性の変化を示す。凝縮系物理の長い歴史の中で、こうした電子相転移を元素置換や圧力印加などあらゆる手段を用いて制御することによって様々な量子相が見出されてきた。我々は強電界を生成する電気二重層トランジスタ(EDLT)を用いた「電圧による」相転移制御を幅広く実現し、新たな電子物性の開拓を目指している。

電界誘起超伝導

半導体や絶縁体へキャリアをドーピングする方法は、前世紀の銅酸化物高温超伝導体発見以降物質開発の有力な指導原理になっている。我々はこれまでに外部電界を用いたキャリアドーピングに着目し、従来の電界効果トランジスタ(FET)の約10倍以上のキャリア密度を変調できる電気二重層トランジスタ(EDLT)が非常に強力な手段となり得ることを実証してきた。この電界誘起超伝導は空間反転対称性の破れや系の二次元性に起因した特異な超伝導状態である。我々は超伝導層の厚みや磁束状態、ギャップ構造などに関する詳細な性質を調べることで、電界誘起超伝導現象の理解を目指している。その一方で、EDLTを幅広い物質系に拡張し、新規超伝導体の探索を行っている。

強電界によるスピン制御

EDLTの手法は、界面での高密度のキャリア蓄積を実現するという特長に加え、試料表面に巨大な電場を誘起することが出来るという特長を有している。この強電場を用い、垂直方向の電場を実効的な磁場に変換するという性質を持つスピン-軌道相互作用を利用して輸送電荷のスピン特性を制御することにより、キャリアのスピン自由度に由来する新奇物性の開拓を目指している。特に近年ではポストグラフェン材料として注目される層状遷移金属カルコゲナイド物質であるWSe2において、EDLTを用いることで電場の方向にスピンが偏極している特異な電子状態が実現され、スピン偏極が電場の大きさによって自由に制御できることが明らかになった。